世界で開発・製造される化学物質の数は年々増加しています。現在、工業的に製造されて世の中で流通している化学物質は、10万種類ともいわれています。その性状は多種多様です。そのため、使用物質に関する知識が不十分な状態で、化学物質を取り扱うことは非常に危険です。場合によっては、取扱う労働者の健康障害に重大な影響を及ぼしかねません。
今回は「化学物質又はそれを含有する製品」(以下、「化学品」)を取扱う人が、使用物質の危険性の確認に活用しているツールであるSDS(安全データシート)をご紹介します。
国内外の化学品の流通においては、GHS分類に対応したSDSの提供が不可欠です。SDSには、化学品の危険有害性等に関する情報が記載されており、化学品を使用して作業をする労働者は、ここから有益な情報を得ることができます。
*GHS(The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals):世界的に統一されたルールに従って、化学品を危険有害性の種類と程度により分類し、それらの情報が一目でわかる絵表示でラベル表示し、SDS(安全データシート)による情報提供を行うシステム
*SDS(Safety Data Sheet):化学品の安全な取り扱いを確保するために、化学品の危険有害性等に関する情報を記載した文書
SDSは、GHS分類に対応した16項目の情報を記載しています。全て重要な項目ですが、特に注目したいのは『危険有害性の要約』です。物理化学的危険性、健康に対する有害性、環境に対する有害性の3つに大別されています。図1は、有害性および危険性の分類基準の一例です。区分の数字が小さいほど、有害性、危険性ともに高くなります。
試薬や洗浄剤など多くの用途に使用されているアセトンの、健康に対する有害性を表1に示します。ここでは区分2(有害性が高い)の項目が4つあります。つまりアセトンは有害性が高く、取り扱いに十分配慮が必要な物質です。
危険有害性クラス | 区分 | 人体への影響 |
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眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2B | 眼刺激 |
生殖毒性 | 区分2 | 生殖能または胎児への悪影響のおそれの疑い |
特定標的臓器 全身毒性(単回曝露) | 区分3 (麻酔作用、気道刺激性) |
眠気やめまいのおそれ 呼吸器への刺激のおそれ |
特定標的臓器 全身毒性(反復曝露) | 区分2(血液) | 長期にわたる、または反復暴露により臓器の障害のおそれ |
吸引性呼吸器有害性 | 区分2 | 飲み込んで気道に侵入すると有害のおそれ |