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工夫無くては成り立たない分析

tuti.jpg土壌中の硫黄分測定を大量受注したときのことです。分析方法は石炭・コークスの元素分析で使われている「エシュカ法」に決定しました。これは試料とエシュカ合剤(酸化マグネシウム+炭酸ナトリウム)とを混合し、電気炉中で徐々に加熱して800℃で1.5時間反応させて試料中の硫黄分をすべて硫酸イオンとした後、重量法で測るという方法です。

準備を進めていると、ひとつ問題が出てきました。対象の土壌に水銀が含まれている可能性があることが判明したのです。そのまま試験を進めると、電気炉で加熱した際に電気炉内で水銀の蒸気が発生し、実験室内が水銀蒸気で汚染され、水銀分析が出来なくなり、また、分析作業を行うひとの健康にも影響がでる恐れがありました。

水銀を捕集する方針が決定

電気炉の説明書を見ると、不活性ガス(窒素やヘリウムなど)を注入するための穴が背面に2か所空いていることに気づきました。「その一か所からホースを繋ぎ、洗気瓶に炉内のガスを引き、過マンガン酸カリウム溶液に水銀を捕集する」という方針が決定しました。 原理は簡単なのですが、少々工夫しないと実際の捕集装置は出来上がりません。

数々の工夫

工夫その1: コールドトラップを設置しました。rutubo.jpg
800℃の空気をいきなり洗気瓶に導入すると捕集液が沸騰してしまって捕集できない可能性があったためです。約2メートルの銅管を用意し、片方の端を電気炉に繋ぎ、直径約10センチメートルの筒に巻きつけてらせん状とし、(筒から外して)らせん状の部分を水に漬けて、もう片方を洗気瓶に接続しました。こうすることにより、電気炉の出口付近では数100℃であったガスも洗気瓶の入口では室温程度に下がりました。

工夫その2: 水銀捕集用の洗気瓶は2個連結しました。
これは排ガス測定などでは常識的な処置なのですが、次のような場合に対処するためです。
・1本目の瓶の捕集液で水銀が捕集しきれなくなった場合
・1本目の捕集液中の過マンガン酸カリウムが還元されてしまうと水銀が捕集できなくなってしまうので、その際の予備として。(濃い紅色をした過マンガン酸カリウム溶液は還元されると透明になるので目視で確認できます)
・コールドトラップで空気を冷やしているので、凝集した水が入って1本目の瓶が溢れてしまう場合
この業務は週末に行っていたので、週明けに2本目の溶液を測定して水銀が検出されないことを確認しました。

工夫その3: 2本の捕集用洗気瓶とポンプとの間に空の洗気瓶を接続しました。
洗気瓶中で生じた飛沫が直接ポンプに吸い込まれないようにすることが目的です。また、瓶を逆につないで捕集液を吸い込んでしまうというミスにも対処できます。

こうして、完成した水銀捕集装置を設置し、4週間で約200検体の測定を無事に終えることができました。

アイデア賞受賞

後日、このことを当社社員が全員参加するナレッジマネジメントの実践活動をレポートする「ひと工夫報告活動」に提出したところ、アイデア賞をいただきました。まだまだ上には最優秀賞、優秀賞がありますので、もっと上を目指して工夫していきたいと思います。

分析技術グループ 三堀