地歴調査では、特に有害物質の取扱い履歴が重要となってきます。得られる情報は様々で、場合によっては「有害物質使用・保管」に該当するのか、判断に迷うケースがあります。
製造メーカーより入手できるSDSには、化学品の名称等、様々な情報が記載されています。
項目には「組成、成分情報」や「適用法令」があり、有害物質が含まれているか、法適用の物質であるかを確認できます。
例えば、「アセトニトリル」という物質がありますが、名称だけではどのような成分が含まれているかが分かりません。SDSを見ると、化学式は「CH3CN」、適用法令に「土壌汚染対策法」という記載が確認できます。
以上から、アセトニトリルはシアン化合物と考えます。
(アセトニトリルは一般的に安定した物質であり、分析を行ってもシアンとして検出されないという知見もあります。)
お客様より「有害物質を微量含有する場合はどのように判断するのか?」というご質問を頂くことがあります。
例えば、ベンゼンについて、ガソリン中の含有量は0.63%、A重油は0.1%未満です(「PRTR排出量等算出マニュアル 第4.1版 経済産業省・環境省」より)。
ガソリンやA重油は、有害物質として考えるべきでしょうか。
環境省公表の「有害物質使用特定施設に関するQ&Aについて」によれば、「SDSの情報以外に把握する方法が無い場合には、SDSの情報を判断の参考として差し支えない」とされています。
ベンゼンは特定第1種指定化学物質であるため、0.1%を基準として含有の有無を判断します。
Q&Aを参考とすれば、ガソリンは対象、A重油は対象外ということになります。
ガソリンについては、神奈川県条例では「ベンゼンを微量含むガソリンを保管・販売
することはベンゼンの使用等に該当しない」
と明記されています。一方で、東京都や
埼玉県では、ガソリンはベンゼン含有物質と
することが多いです。
また、環境省公表のQ&Aについて、とある
自治体に聞いた際には、「Q&Aは有害物質使用特定施設の
使用の廃止時のことを規定している法3条に関する
もので、3,000m2以上の土地形質変更時のことを規定している法4条や条例ではその通りではない」
という返答を頂いたことがあります。
有害物質とするかについては、見解の違いが生じうる難しい議題であると思います。
私は地歴調査を長年担当しておりますが、今でも悩むことが度々あります。どのような根拠に基づいてどのように解釈するのかを考え、慎重に判断しています。