オオスミに入社したばかりの頃、自然環境調査の案件を担当していた営業の方が、オオタカの飛翔図を見せてくれました。
猛禽類や大型の哺乳類などといった生態系ピラミッドの頂点やその付近の階層に属する生物を調査すると、その生物に係わるピラミッドの下位の生物や生息環境の状況など、様々なことを知ることができます。
数年前、そのピラミッドの下位に属する生き物と接する機会がありました。
私は、購入したキャベツにくっついていたモンシロチョウの幼虫を羽化するまで手元に置いていたことがありました。羽化した後は外に放したのですが、それまでの間に色々なことを考えました。
私の購入したキャベツは、農薬の使われた普通の安いキャベツで、半玉がラップで包まれていたものでした。モンシロチョウは薬剤に対して弱いのですが、この青虫は引き続き与えていた同じキャベツを食べ続けても死んでしまうことはありませんでした。もしかしたら、薬剤に耐性を持ってしまった個体かもしれないと考えました。
羽化して成虫になった後、近くの野原にこのモンシロチョウを放しました。しかし、その野原の前にある道路を挟んだ向こう側には、畑がありました。農家の方々にとっては、キャベツやダイコンなど、アブラナ科の植物を好んで卵を産み付けるモンシロチョウは、害虫です。私は害虫を育てて外に放してしまったことになります。
羽化したモンシロチョウの羽の色から、私が飼っていたモンシロチョウは雄であることが分かりました。放した後、しばらく様子を伺っていたのですが、すぐに雌のモンシロチョウとペアになりました。交尾が成功していれば、相手の雌は産卵をします。
それを見ていて、もしこのモンシロチョウがある地域特有の特別な個体だったら。と、想像してみました。その場合、特別な遺伝子は失われてしまうかもしれないと考えました。
私は、モンシロチョウは、日本に昔からいる昆虫だと思っていましたが、ダイコンやキャベツなどと一緒に日本に入ってきた外来種であることを知りました。定義によっては帰化種になったりします。地理的に、また時間的に、どこからが外来種と在来種の線になるのか、どのくらいの影響で外来種になり、帰化種になるのかとても悩みました。
一匹の青虫から色々なことを考えました。(また、童心にも返りました。)
外来種は駆除するのか、それとも保護して繁殖を防ぐのか。外来種と呼ばれる植物や動物のほとんどが人の手によって移動していますが、その生き物にしてみれば、生まれ落ちた土地で一生懸命生きているだけだと考えたりします。
植物、動物、昆虫、魚、また、有機物・無機物問わず、今目に見えているもの、手に触っているものの背景や成り立ち・生い立ちに興味を持つと世界が広がっていきます。