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ベトナムで考えたこと

初めてのベトナム

 オオスミでは、JICAの支援事業を活用して「ベトナム国簡易測定法を用いた省エネ診断技術及び省エネ効果の普及・実証事業」を実施しています。急激な発展を遂げるベトナム国ダナン市が目指す環境都市となれるよう、省エネ診断の実施・普及を通じサポートをする事業です。

 私は、遅ればせながらプロジェクト終盤となった最終報告の段階でようやく現地に赴くことができました。

 私が渡越したのは4月中旬で、日本では桜前線が北上中という季節ですが、ダナン市は既に真夏のような暑さで、日中の最高気温は35度近くを記録していました。日本の気候との較差は覚悟していたものの、想像を絶する高温多湿でさすがに身体に堪えました。
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 空港に着いて車に乗り換え、車中から眺める町並みは近代的で、想像以上にきれいでしたが、その一方で、道路を走り回るオートバイの数に圧倒されました。日本では考えられないほどの数のオートバイが自動車の間を縫って走行しており、とても危険な状況に感じたのですが、現地の方曰く「スピードを出さない(出せない)から危険ではない」そうです。

 確かにその後、数日間の滞在中に一度も交通事故らしき状況を見掛けることはありませんでした。走行中の車やオートバイは、しょっちゅうクラクションを鳴らすことで自分の存在を周りにアピールし、互いに安全を確保しているようでした。街中では朝から晩までクラクションの音が絶えず聞こえてくるため、慣れない私には耳障りに感じましたが、現地の人はさほど気にしていない様子でした。

 ベトナムで道路交通騒音調査を実施したら、騒音レベルはかなり高くなるだろうと思いましたが、日本と同じ基準を設けること自体、意味のないことだとも考えました。やはりそれぞれの地域に合った基準を設定する必要があると考えさせられた次第です。

ホーチミンにて

 数日間のダナン市滞在後、ホーチミン市に移動しました。ホーチミン市では、ダナン市を上回るオートバイの数で、多少慣れかけた感覚が払拭されてしまいました。

 また、街中に張り巡らされた電線の本数にも驚かされました。数十本(100本を超えているかも知れません)もの電線が束になって、電柱に架けられているのです!しかもけっこうな数のケーブルが断線したままぶら下がっており、歩道を歩くにも、多少の身の危険を感じるような有様でした。
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 ホーチミン市では時間に余裕があったので、戦争証跡博物館に立ち寄りました。ここにはベトナム戦争に纏わる兵器や写真、文書等の記録が展示されています。
 入館するときにはあまり深く考えてはいなかったのですが、中に入り、写真や展示物を見るにつれ、息が詰まる思いでした。

 ベトナム戦争と言えば、アメリカ軍が散布した枯葉剤が有名です。枯葉剤は、ジャングルに潜み抗戦する南ベトナム解放民族戦線に対し、その隠れ処となる森の破壊を目的として使用されましたが、枯葉剤にはダイオキシン類が多く含まれており、終戦後、多くの健康被害を引き起こしました。

 枯葉剤による被害は、結合双生児として生まれたベトちゃんドクちゃんがよく知られていますが、他にも多くの先天性疾患が報告されています。戦争が悲惨なのは、戦闘に加わっていない一般市民が巻き添えになることと、ベトナムでは次世代以降に健康影響が発現していることです。意外にも、枯葉剤を散布した側であるアメリカ軍兵士の家族にも、枯葉剤が原因と考えられる健康被害が認められているそうです。

 このように終戦後40年以上が経過した今日でも、多くの人々が後遺症ではない、様々な障害に苦しんでいる現実を目の当たりにして衝撃を受けました。


 時代の流れとともに環境問題が変化するのは当然ですが、私たちはたとえ省エネという課題で環境問題に取り組もうとも、この国が経験した悲しい歴史と、それによって今も多くの環境問題、健康問題が継続しているという事実を忘れずに業務に臨みたいと考えています。

調査第二グループ 高橋(正)