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自然観察の醍醐味~スミレの横顔~

 私の趣味の一つに自然観察があります。10年くらい前、ハイキングの際に、スミレには多くの種類がある!と気づきました。

 自然観察の第一歩は名前を調べることだと思っています。当時は長野県へよく行っていましたので、『信州のスミレ』という本を買い名前を調べてみようとしました。ところが、これかな?多分これではないかな?と明確ではない場合が多く、すっきりしません。

スミレの見分け方

 スミレの花の形はよく似ているので、見分け方は、茎の有無、花の色、葉の形、等で見分けます。
 茎の有無は、簡単に言うと「花の咲いている茎に葉がついている」状況が「有」です。スミレの花の色は、濃い紫、白、薄紫~ピンク、及び黄色です。また葉の形は、長い、短い(丸い、ハート形など)、切れ込みがあるなどです。
 ですが、茎の有無は早春の「咲はじめ」にはわからない場合が多く、参考とはならない場合があります。

 また、花の色も最も種類の多い、薄紫~ピンク系のスミレの花の色は変化が多いのです。
 花の色の変化の一例として、長野県や山梨県、関東地方の各県などの樹林によく見かける「エイザンスミレ」の花の写真を示しましょう。このスミレは葉に切れ込みがあり、葉の形だけでほかのスミレとはっきり区別できます。(私の好きなスミレです)

 その色の変化は・・・sumire_iro.png  どうでしょう。色も形も変化に富んでいます。葉に特徴のない種類のスミレの名前を決めるのは難しいことがわかりますでしょうか。

観察の「ツボ」発見

 ある日、『スミレハンドブック:文一総合出版』という小冊子を見つけました。それを見ると、1ページに1種類のスミレの説明が書いてあり、全体の写真とともに花の正面、側面、葉の写真が掲載されていました。

 特に注目したのは側面の写真。スミレの花の後ろ側には「距:きょ」という突起物があり、これが変化に富むのです。長さ、太さ、形が種類ごとに異なり、見分ける目安の一つになるのです。
 改めて、『信州のスミレ』を読むと、きちんと「距が丸い」と、書いてありました。気が付きませんでした。

 これは面白いと思い、早速本を買って、今まで撮った写真と比べてみました。
 ところが・・肝心のところが写っていない。花の正面はあるのですが、横から撮ることはしていなかったことに気づきました。
 そこで、以後はスミレを見つけると、全体、花の正面、側面、葉、を撮り、葉の裏を確認し、色が変わっていればとるようにしています。

 では、いくつか紹介しましょう。花の正面と側面の写真です。sumire_yoko.png
 

    1.どこでも見られるポピュラーなスミレ「タチツボスミレ」です。
 
    2.正面から見るとタチツボスミレとほとんど差がありません。しかし1の「距」は花と同じ紫色ですが、2は白いですね。ここではっきり違いが判ります。2は日本海側に多い、「オオタチツボスミレ」です。
 
    3.白花のスミレですが、逆に「距」は紫色。「オトメスミレ」と呼ばれるタチツボスミレの仲間です。
 
    4.「ナガバノスミレサイシン」距が丸いのが特徴です。
 
    5.「コスミレ」。小さくはありませんこの花は正面から見た時に特徴があるのですが、わかりますでしょうか?
 このように、「距」を見ることで、はっきり種類を決められることが多くなりました。

 それでも、名前がわからないスミレも多いのですが、自然観察が趣味の私としては、全てわかってはつまらない。7割程度わかるのが一番楽しいのです。

 名前を調べることだけが自然観察ではない。と考える人も多いのですが、名前を調べるには知識と観察が重要です。私の専門の岩石や鉱物では、観察する「ツボ」のようなものが身についていますが、専門外の植物でその「ツボ」をつかんだことがうれしかったです。これが自然観察の醍醐味だと思います。

 ところで、スミレと同じ時期に咲いている花で見分けの難しい、マムシグサやテンナンショウの仲間があります。スミレと同じように名前を調べてみようとしたのですが、手ごわい。なにか、きっかけ「ツボ」を探そうと思っています。

調査第一グループ 鈴木(恒)