オオスミブログ2025.10.08
オオスミの取り組み
9年ぶりに訪れたインドで見た
廃棄物処理と環境保全への取り組み
8月末から9月にかけて約10日間、インド南部の工業都市チェンナイ、西部のものづくり拠点アーメダバード、首都デリー、そしてIT産業が集積するハイデラバードの4都市を訪れる機会を得ました。
9年ぶりのインド訪問となり、前回の記憶と今回の光景が重なり合い、改めてこの国のダイナミズムと課題を体感する出張となりました。廃棄物関連の現場視察や工業団地の企業訪問を通じて、持続可能な発展に向けたヒントを得ることができました。
進化する都市と変わらぬ風景
今回訪問した都市の中には、近代的な高層ビルや大型ショッピングモールもあり、日本のODAや技術協力も深く関わってきたメトロの開通によって交通も改善しつつあります。9年前には想像できなかった都市インフラの発展に、インドの経済成長を実感しました。
一方で、道路の悪路や砂ぼこり、路上に溢れるごみや家畜の姿、裸足で暮らす人々、上半身裸で現場作業をする人など、変わらない日常風景もそこにはありました。
最先端と未整備が混在する独特の空気感こそ、インドの「今」を象徴しているように感じました。
廃棄物処理現場の視察
今回の出張では、チェンナイ、デリー、ハイデラバードの各都市で、Re Sustainability社(建設・インフラ整備・不動産・産業廃棄物処理等を手掛けるラムキーグループの廃棄物処理会社)が運営する廃棄物処理やリサイクル関連施設を視察しました。
最初に訪れたのは、チェンナイ郊外にある広大なダンプサイト。ここでは、長年にわたり蓄積された廃棄物が山のように積み上がり、重機によって掘り起こされ、分別・再資源化の作業が進められていました。堆積したごみの内部からは水がにじみ出しており、今後は焼却施設の建設が予定されているとのことで、ボーリング調査も進められていました。こうした「レガシー廃棄物」への対応は、インド各地で共通の課題となっています。
デリーでは、廃棄物の再資源化やエネルギー回収を担う施設を視察しました。バイオマス発電所では、可燃性ごみを燃料として発電を行い、副産物として肥料化の取り組みも行われていました。
施設内には分析ラボが併設されており、受け入れごみの性状管理や燃料品質の確認を日常的に実施しているとのことでした。焼却発電プラントでは、排ガスのモニタリング装置がインターネットを通じて州政府にリアルタイムで接続されており、環境管理の仕組みが制度として整備されている点が印象的でした。
ハイデラバードでは、廃棄物の最終処分場や建設系廃棄物の再生プラントを訪問しました。ここでは、米国環境保護庁(US EPA)の手法に基づく検査・分析が実施されており、搬入される車両ごとに抜き取り検査を行っていました。建設廃棄物を分別・再利用し、砂利や砂として販売する取り組みも進められており、資源循環型ビジネスとして成立している様子がうかがえました。
工業団地・日系企業の工場視察
今回は廃棄物関連施設に加え、各都市の工業団地や日系企業の工場も訪問しました。そこで印象的だったのは、インド独自の厳しい環境規制です。
例えば、排水は工場敷地外に出せず、必ず自社内で処理・再利用することが義務付けられており、日本とは異なるルールが運用されていました。また、環境負荷の大きさにより産業がカテゴリー分けされ、入居できる工業団地が制限されていました。
一方で、屋根に太陽光パネルを設置して自家発電を行うなど、再生可能エネルギーの活用に積極的に取り組む工場もありました。さらに、多くの工場で製造工程中に発生する端材のリサイクルも実施されていました。
これらの取り組みは、インド政府の政策というよりも、グローバルなカーボンニュートラルの流れを受けた本社方針や取引先からの要請に応じた企業努力として進められている印象を受けました。
インドと日本の未来を見据えて
インドは世界最大の人口を抱える大国として、今後さらに経済成長を続けていくことは間違いありません。その中で、廃棄物やエネルギーといった社会基盤の整備は、成長の持続に欠かせない大きな課題です。
日本は長年の経験から、リサイクルや省エネ、環境保全技術において多くの知見を持っています。今回の視察を通じて感じたのは、こうした日本の技術や仕組みが、インドの発展にも十分に役立つ可能性があるということです。
オオスミとしても、環境調査・分析の専門会社として現地の環境課題に関心を持ち、日本で57年にわたり培ってきた知見をどのように生かせるかを考えるきっかけとなりました。両国が互いに学び合い、補い合うことで、新たな価値を生み出していけるのではないかと感じています。
9年ぶりの訪問で改めて感じたのは、「インドは変化の只中にある国」であるということです。
発展と課題が交錯する現場に立ち会うことは、日本にいるだけでは得られない貴重な体験でした。
今回得た学びを、今後の事業や交流にしっかりと活かしていきたいと考えています。