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水俣条約と水銀

 「水俣条約」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?近い将来に発効されるのではないかと言われている条約です。osen.jpg 「水俣」と言えば水俣病という公害病の事を連想した方も多いと思います。皆様の連想の通り、「水俣条約」とは水俣病と関連のある水銀の排出削減・根絶に関する条約です。水俣病は昭和30年代に発生した公害病で、水俣湾の有機水銀汚染を原因とする日本の四大公害の一つと言われています。その悲劇を繰り返さないためにも条約に水俣という地名が入りました。

環境中に放出される水銀

 人の様々な活動により水銀は放出され続け、地球環境を循環している水銀量は増え続けていると言われています。その中でも小規模金採掘からの放出が全体の3~4割と大きな割合を占めています。なぜ、金採掘が水銀の放出元となっているのでしょうか。これは水銀の性質が大きく影響しています。水銀は常温で液体であり、加熱すれば他の金属よりも簡単に気体にすることが出来ます。さらに、金と水銀は容易に合金になります。水銀のこの2つの性質を利用して、液体である水銀を利用して合金として金を集め、その後水銀のみを燃焼蒸発させることにより高価な金のみを得ることが出来るのです。
 ここで大きな問題となるのが小規模金採掘の際に使用された水銀は、ほぼ回収されずに大気中に放出されてしまうという事です。この事はかなり昔から問題提起されてきましたが、経済的な理由から状況がなかなか改善されていません。

水銀の行き着くところ

 放出された水銀はどうなっていくのでしょうか?地球環境中で様々な動きをすることになりますが、その一部は食物連鎖により生物の体内を巡っていきます。maguro.jpgそして、より高次の捕食者ほど水銀の濃度は上昇していきます。当然、食物連鎖の頂点にいる人類にはどんどん水銀が蓄積していくことになります。
 日本では妊婦さんに水銀含有濃度が高い魚類を食べ過ぎないようにと厚生労働省が注意喚起しており、漠然と怖いなと感じた人もいるのではないでしょうか。

水俣条約の役目

 放出されて広がっていった水銀を回収していくことは非常に困難であり、このままでは地球環境中を循環する水銀の量は増えてづけていきます。
 そのため、環境中に水銀をこれ以上放出させないためのルールとなる「水俣条約」の締結が必要となってくるのです。

【参考資料】
環境省HPアドレス 水銀に関する水俣条約の概要
https://www.env.go.jp/chemi/tmms/convention.html
厚生労働省HPアドレス 魚介類に含まれる水銀について
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/

分析技術グループ 松川