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本当の技術力とは?~知識や経験を、素早く手順選択に活かす~

 「結果が想定と違う!」
環境の分析をしていると、たまにこんな悲鳴があがります。しかし実は、私達の分析業界ではしばしば起こる事なのです。
 環境の分析は、公定法、つまり法律や規格に沿った方法で分析を行う事が多いのですが、全ての手順が決まっている訳では無く、扱う試料によって、適正な手順を選択しながら分析する必要があるため、このような状況に遭遇することがあります。
 こんな時は、公定法を外れないように、しかし試料に合った手順を選び、正しい結果を出す必要があります。

BODの値が想定よりも低い!

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 BOD(生物化学的酸素要求量)とは、水質の有機性汚濁の指標を、好気性細菌が有機物を分解する時に使う、酸素の量(濃度)で表したものです。つまり、鉛や水銀などの化学分析とは異なり、生物の力を借りて分析値を出しているわけです。好気性細菌が少ない水を分析する時もありますが、そんな時は、好気性細菌を多く含んだ水(植種液)を加えて分析をすることが公定法の1つであるJIS(日本工業規格)で決められています。

 ところが、たまに、この好気性細菌を殺してしまうような、毒性物質を含んだ水の分析依頼を受けることがあります。 好気性細菌が死んでしまえば、有機物を分解する生物がいないので、BODの値は低く出てしまいます。

公定法から外れないように!しかし正しい値を!

 先日、毒性物質を含んでいる可能性の高い排水の分析依頼を受けました。
JISには、正常なBODを示さない試料の場合、試験室でこの試料に馴(な)らした微生物を培養し、それを分析に用いるという方法が紹介されています。しかしこの方法は、培養の期間や費用が多く掛かってしまうというデメリットもあります。

 そこでお客様と相談し、選んだ方法は・・・「分析試料の処理水を植種液に用いる」という方法でした。 お客様が、分析した試料の排水処理を行っていた事に着目し、「その処理水には毒性物質に馴れた菌がたくさんいるのでは?」と発想したのです。
 結果は大成功!
無事、毒性影響を受けていない結果となり、お客様が希望された期限内に、正常なBOD値を得る事が出来ました。

これこそが技術力!

 分析業務は、正しい値を出す事はもちろんですが、常に納期や費用との勝負となります。「あの測定機器があれば」「あと1ヶ月あれば」「あと20万円予算があれば」そんな悩みが、毎日のように出てきます。

hito.png  分析知識や分析技術も大切ですが、一番の肝は「知識や経験を、いかに実地に応用出来るか」であり、それこそが本当の技術力だと、日々痛感しています。

 環境調査・分析の業界は、何年居ても毎日新しい事が出てくる「ずっと楽しめる業界」だと感じます。 自分の技術力が発揮出来る分野はまだまだ狭いですが、オオスミの各分野のスペシャリストに囲まれながら、これからもお客様と話し、悩み、楽しみながら解決していこうと思います。

分析技術グループ 齊藤