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よくできているものをまねる

 外出の自粛により、趣味の虫取りに出かけられず、以前よりも家にいる機会が多いです。
 出来栄えはさておき、家事をすることも増えました。今回は、家族の食事の準備をしていた時に気付いたことを書きます。

何かに似ている

supu.pngのサムネイル画像 子供用の食器は、手のホールドや食品のキャッチをサポートするために、お箸に指を通すリングが付いていたり、フォークに突起が付いていたりします。フォークから食べ物が落ちない様に、形態的な工夫が施されているのです。

 このフォークの突起、何かに似ていませんか?


kuwa.pngのサムネイル画像 
 私には、クワガタの大あごに見えます。物をしっかりとホールドするという目的のために、似たような形態になったのかも知れません。または、はじめからクワガタの大あごに着想を得て開発されたのかも知れません。

バイオミメティクス

 生き物にヒントを得た技術は、バイオミメティクスと呼ばれているそうです。例えば、種子が衣服にくっつく植物のオナモミからヒントを得て開発されたマジックテープは有名です。

 昆虫ではどうかと調べてみると、近年人々の関心が高まっているようです。
 青く輝く羽を持つモルフォチョウの構造色を模倣した美しい車のボディーや、蚊の口器を模倣した痛みの少ない注射針はすでに実用化されていました。実用化はこれからですが、ハサミムシの羽は、広げた面積の1/10よりも小さく畳めることから、人工衛星のソーラーパネルに応用できる可能性があるそうです。

 最近、クリーンエネルギーとして風力発電の普及が話題となっていますが、そよ風でも効率よく風車を回すには、トンボの翅の構造がヒントとなっているようです。

プラスチック問題の救世主?

 新しい環境問題としてプラスチック汚染が認知されました。
 ここにも、昆虫の機能が活用されるかもしれません。その可能性のある昆虫はワックスワームと呼ばれるガの幼虫で、ミツバチの巣を食べてしまう、養蜂家にとっては困り者です。一方でこの幼虫は、腸内細菌の力を借りて、プラスチックの一種であるポリエチレンのみを食べて生きることができるそうです。蜜蝋とポリエチレンは引いて見れば化学的な構造が似ています。私も、マイクロプラスチックの分析をしていたとき、プラスチックの粒子だと思って拾い上げて材質を調べると、蜜蝋だったということがありました。幼虫も気づかず食べてしまうのでしょうか。

 もちろん、ワックスワームが食べてくれるからプラスチックごみを減らさなくても大丈夫ということではありません。

大先輩に学ぶ

 昆虫は、何億年もかけて様々な環境に適応し、いまでも世界中で繁栄しています。
 環境浄化や資源の有効活用について課題に直面したときは、同じような行動をとる昆虫を観察してみてはいかがでしょうか?すでに何億年も前に克服されているかもしれません。

 分析技術グループ 上田