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原理は簡単な重量差分析

 普段から、化学や測定・分析というものに触れる機会がなければ『環境分析』と聞くと難しそうだと感じるかもしれません。しかし、環境分析の中には簡単で単純な原理を用いて分析をする項目もあります。
 今回は、その中の重量差分析をご紹介します。

原理が簡単な重量差分析

 g.jpg浮遊物質量とノルマルヘキサン抽出物質の2項目は環境分析の中でも重量差分析のカテゴリーに分類され、オオスミでもよくご依頼をいただきます。この2項目は公共用水域の環境基準や排水基準としても設定されています。

 浮遊物質量の分析は専用器具にろ紙をセットして、そこへ採取してきた水を流し込んでろ過します。ろ紙表面には水の中に含まれる浮遊物質(粒子や微生物の死骸など)が残ります。ろ紙はあらかじめ重さを量っておき、ろ過後のろ紙を乾かして再び重さを量ります。水を流す前後の重量差を、流した液量で割れば、浮遊物質量が計算されます。
 これが重量差分析の原理となります。水の汚れの指標としてもわかり易く、分析原理も理解し易いと思います。

空気の重さにも注意が必要

 〇DSC02777-2.jpgここで重量差分析の精度について考えてみたいと思います。
 ノルマルヘキサン抽出物質の分析ではろ紙の代わりにガラス容器を用いて重量差分析を行います。浮遊物質量の分析と同様に、空のガラス容器の重さと、ガラス容器+抽出物質の重さとの重量差を用いて結果を計算します。

 ここで分析精度に影響する事象の一つに温度があります。温度なんて重量と次元が違うから関係ないと思われるかもしれません。例えば、測定する天秤周辺の温度が20℃で、ガラス容器の温度が30℃だったとします。仮にガラス容器が100mlの容量とすれば、容器には30℃100mlの空気が入っていると考えてください。100mlの空気の重さは20℃では120.5mg、30℃では116.5mgです。その差は4mgです。正しく分析するには0.1mgの単位で量りとる必要があり、4mgは大きな誤差です。天秤周辺温度とガラス容器の温度は一定に保つ必要があります。重量差分析において温度は精度に大きな影響を与えます。

 もちろんオオスミでは温度はもちろん湿気、気流や静電気にも常に注意して測定をしています。これからも、環境分析に真剣に取り組み、お客さまのお役にたちたいと思います。

分析技術グループ 石川