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PCB廃棄物処理期限に向けて

高濃度PCB廃棄物の処理期限は目前

PCBサンプリング.jpg オオスミ本社のある神奈川県では令和4年3月31日に高濃度PCB使用トランス・コンデンサ類の処理期限を迎えます。この処理期限はPCB特措法で定められており、所有者は期限までに処理しなければなりません。

 ところで、この処理期限とは最終処分したことやマニフェストE票が返却されたことではありません。処理期限という名称から処理を終わらせる期限と誤解されることが多いようですが、確認した自治体の多くは処理業者と処理委託契約を締結する期限としているようです(注1)

 とはいえ、期限は目前です。もし高濃度PCB廃棄物を所有されている方やPCB使用製品をお使いの方がいらっしゃいましたら速やかに手続きを進めていただければと思います。

高濃度の次は低濃度PCB廃棄物

 高濃度の目途がついたら、次は低濃度PCB廃棄物の処分に向けて動き出します。低濃度PCB廃棄物の処理期限は令和9年3月31日です。
 令和4年2月に「低濃度PCB含有電気機器等の調査方法・適正処理に関する手引き(案)」に対するパブリックコメントが募集されており、手引き(案)ではPCBに汚染された可能性がある工作物の具体例がこれまでより多く示されていました。
 ようやく低濃度の調査方法を整理する動きが出てきましたが、期限までに処理を完了できる内容だとはまだまだ言い難い印象です。より良い方法が定められることを期待しています。

手引き(案)に記載されていない低濃度PCB

 手引き(案)は題名のとおり電気機器等をターゲットにしています。PCB廃棄物の重量・体積の観点からすると主なPCB廃棄物はやはり電気機器となるでしょう。とはいえ、この手引き(案)に示されていない機器もあり、加えて廃棄物管理者の方々の頭を悩ませているのは汚染物ではないでしょうか。

 PCBは問題になって久しいため、管理者が職務に就く以前から保管されている由来不明のPCB汚染物というものをよく耳にします。由来が分からないので高濃度なのか低濃度なのかも、そもそも本当にPCB廃棄物に該当するのかどうかも分からないという廃棄物です。

分析方法も運用に注意が必要

⑥-3 分析.JPG 由来不明の廃棄物を判定する際に用いられるのが濃度分析です。定められた方法によって数値として評価するため大変わかりやすいツールですが、使い方によっては目的に合致しないことになるケースもあります。

 これまで「低濃度PCB廃棄物の測定方法」(注2)や「該当性判断基準」(注3)などが徐々に整備されてきましたが、公示された当時から解釈について混乱が見られました。

 例えば由来不明のビニール製の保護手袋についての濃度分析を考えます。
 廃プラについて基準を見ると、高濃度か低濃度かの判定には低濃度PCB廃棄物の測定方法を用い、PCB廃棄物に該当するかどうかの判定には厚告192号(注4)又は低濃度PCB廃棄物の測定方法を用いることになっています。これは、精度を確保できるなら低濃度PCB廃棄物の測定方法を用いれば(多少強引ですが)ひとつの分析方法でどちらの基準についても判定できることになります。
 しかし、金属くずの場合になると、PCB廃棄物に該当するかどうかの判定方法は厚告192号に限定されます。 つまり、(分析原理についての議論はさておき)金属くずは法的には判定基準に応じて分析方法を使い分ける必要があるのです。

 私は10年ほどPCBの調査・分析・処理支援の業務に携わらせていただいておりますが、どんどん濃度分析するべきとは考えておりません。廃棄物は適正に処理できればそれが一番。分析も適正処理のためのツールのひとつだと考えています。
 国はこれまで「高濃度PCB廃棄物かどうか」を重点的に調べるよう施策を整備していましたが、これからは「PCB廃棄物に該当するか、しないか」に移ることになります。用いるべき調査方法や分析方法についてこれまでと異なる場合がありますので、ご不明点がございましたら当社までご相談ください。

 ※注1)自治体によって運用に細かな差異がございます。
 ※注2)低濃度PCB含有廃棄物に関する測定方法(第5版) 令和2年 環境省
 ※注3)環循規発第1910112号/環循施発第1910111号 ポリ塩化ビフェニル汚染物等の該当性判断基準について
 ※注4)特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物に係る基準の検定方法 平成4年 厚生省告示第192号
 

 調査第三グループ 西江